《MUMEI》
危険過ぎる賭け
みゆきは手足に力を入れて、必死にもがいた。
しかし、それは無駄な抵抗だった。
「!」
不破野。しかも全裸。みゆきは泣きそうな顔で暴れた。
「んんん!」
不破野は勝ち誇ったように歩み寄ると、いきなりみゆきの上に乗っかった。
自分も相手も全裸。危険過ぎる。やられてしまう。
ここはプライドを捨てて許してもらうしかない。
そう思ったみゆきは怒りの感情を抑え、哀願に満ちた目で不破野を見つめた。
「みゆき」
不破野が悪魔的に迫る。
「この体好きにしていい?」
みゆきは首を左右に振った。
「かわいい!」
あれほど強気だった女の子が弱気になっている。不破野は満足の笑みを浮かべた。
「みゆき。会話がしたいな。猿轡はずしてあげるけど、悲鳴はダメだぞ」
みゆきはかわいく頷いた。この危機から脱出するためなら、演技もする。
不破野は猿轡をはずした。
「あたしを、どうする気?」
「どうしてほしい?」
「もちろん無傷で解放してほしい。今すぐほどいてくれたら警察には言いません」
不破野は怖い顔になると、みゆきの顎を掴み、乱暴に上向かせた。
「あっ…」
「みゆき。生意気なこと言うとクンニするよ」
みゆきは黙った。こんなバカ男に舌で大切なところを攻められたら、たまらない。
「みゆき。さっきの話の続きをしようぜ」
「続き?」
「みゆきなら3分あれば落とせるって話」
みゆきはたじろいだ。嫌いな男に愛撫されるのだけは避けたい。
「冗談に本気で怒ったあたしがバカでした。ごめんなさい」
しかし不破野はしつこい。
「冗談じゃないよ。まあ3分はともかく、みゆきは感度良さそうだから、俺が本気で攻めたらメロメロになるよ」
罵倒したい気持ちを、みゆきは必死に抑えた。
「それは女性に対して失礼だと思います。野蛮人ならいざ知らず、ドクターなんですから」
不破野はなおも迫る。
「みゆき。敬語がかわいいよ。怖いのか。さっきは、はあ、とか言って俺を蔑んだ目で見ていたくせに」
みゆきは横を向いた。生きた心地がしない。
「みゆき。裸見せて」
みゆきは身じろぎした。
「やです」
「うるさいよ」
不破野がバスタオルを掴む。
「待ってください、あっ…」
取られてしまった。
(悔しい!)
みゆきは真っ赤な顔をして横を向く。不破野は顔を覗き込んだ。
「みゆき。いい体してんじゃん。恥ずかしがることないよ」
こんな最低男は、必ず警察に突き出してやる。そう、みゆきは心に固く誓った。
だが今は無傷で解放されることが先決だ。
「もういいでしょ、帰して」
「甘いよみゆき。ゲームはこれからだ」
みゆきは愕然とした。
「みゆき。賭けをしないか?」
「賭け?」
「俺はみゆきを落とす自信がある。みゆきは俺に何されても落ちない自信がある。だろ?」
「落ちるって?」
「メロメロにはされない自信あんだろ?」
「当たり前でしょ」みゆきは強気の目で睨んだ。
「じゃあさあ、勝負しようぜ。もしも俺が負けたら、つまり落とせなかったら解放してあげる」
みゆきは真顔で聞いた。
「もしも俺の愛撫でみゆきが昇天してしまったら、俺の女になるってどう?」
悪寒が走った。
こんなバカ男の彼女になどなれるはずがない。
負けたら身の破滅を意味する。それはあまりにも危険な賭けだ。
「みゆき。怖じ気づいたか?」
「だれが!」
「敏感なところ攻められたらヤバいもんな」
「うるさい!」
みゆきは本気で怒った。
こんなバカ男の愛撫で昇天なんかするわけがない。
「時間は、何分?」
「10分」
「10分!」
バカにしている。みゆきは心底怒りが込み上げてきた。
10分で女がメロメロになると思う神経を疑う。
AVか何かの見過ぎだろう。みゆきは軽蔑の眼で不破野を見た。
「10分経ったら絶対に解放してくれる?」
「もちろん」
みゆきは覚悟を決めた。
「いいわ。その賭け、受けて立つわ」

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