《MUMEI》

「俺が二郎を大切にしなかったから?」

指を伸ばしかけて七生は触れるのを止めた。


「…………」

上手い言葉が見付からない。





「怒ってんの?

黙って瞳子さんとコンヤクしたこと……」




婚約…………?

誰が、

いつ、

どこで?


「さ、さいてー、だ……
俺のこと蔑ろにしやがって……二号さんにでもするつもりだったのか?」

だめだ
七生なんかと居たら
心臓がいくつあっても足りないし、
幸せになんかなれっこないんだ。



わ、泣きそう……。

でもそんなみっともない姿は七生の前で晒すものか。

俺なりの意地だ。

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