《MUMEI》
入学 2
「引越し、手伝いにいけなくてごめんな。その日はどうしても外せん用事があって…。」
「あぁ、ええよ、別に。大した荷物も無かったし。」
「そう?よかった。弘くんの住んでる所ってハイツ坂下だよね。私の家からも近いし、自炊がしんどかったらご飯だけでも食べにきたら?お母さんも別にそのくらいなら大丈夫って言ってたし。」
「いや、さすがにそこまで迷惑はかけられへんわ。俺んちの親、説得してもろて、その上住むとこまで探してもろたのに、そこまで面倒見てもろたらいくら親戚でも気が引けるわ。もしどうしようもない事が起きたら、その時はお願いしますよって、叔母さんに伝えといてえや。」
「遠慮することないのに。まあ、自炊も大事だけど躰は壊さんように気をつけてね。」
弘一は元々、地元の高校に進学する予定だった。しかしそれは絶対に避けたい弘一は、何とかして地元を離れる方法は無いかと考えた。しかし、親に言っても全く取り合ってもらえず、諦めかけた時に東京の七海の事を思い出したのだ。2〜3年ぶりに連絡をするのはさすがに緊張したが、電話で相談してみたところ、協力してくれることになったのだ。

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