《MUMEI》
戦闘〜騎士二人
「次は守護騎士団の団長の彩詩、君と墓地で話をしてた人だね、それと僕と同じ副団長のごまの試合。たぶん守護騎士の中で一番ハイレベルな試合だよ。」
そう嬉しそうに話しながら、試合会場を見ている。尻尾がパタパタと左右に揺れている。バンプもこの試合が楽しみのようだ。
会場では、二人の騎士が向かい合っている。
一人は、団長である彩詩。彼女の持っているのは細身の剣。そして申し訳程度に左手に小さな盾のをつけている。右手を胸の前に出し、剣は顔の中央を通るように立ててある。動きやすさを重視しているようで、鎧は着ていない。長い金髪が夕日によって輝き、一枚の絵画のようであった。
対するは、ごま、そう呼ばれ親しまれている騎士。本名はマータロットゴート、誰がごまと呼び出したかは定かではないが、本人も気に入っているようである。両手で大振りな剣を低く構え、盾は持っていないようだった。金属製の重鎧を纏い、フルフェイスの兜。動く壁、そう表現できそうな姿。
彩詩が纏うは、神聖すぎるゆえの近寄りがたさ。対するごまが纏うは、押し潰すような威圧感。装備も纏う空気も極端に異なっている。会場がシンっと静まり返った。ごまが剣を大きく振り上げ、肩に担ぐように構えを変えた。
「試合とは言え、手は抜くなよ。真剣に勝負!!」
そう声をあげ、脚に力を溜めていく・・
「ん〜・・まぁやるからには真面目にやるよ。さぁてと・・来い!ごま。」
剣を構えている右手を水平に横へ伸ばす。盾をつけている左手は下がったままだが、一気に気配が変わっていく。鋭く・・と
声につられる様に一気に前に出て行くごま。重装備であることを忘れてしまうような突進。
「おおおおおおおおおおお!!」
間合いに入ると同時に剣を振り落とす。
速度は十分。そして、圧倒的な破壊を可能とするかのような、暴風。
それに対し彩詩は一歩、緩やかに前に出る。ごまの突撃と比べると動いていないようにも見える一歩。
キュィイイ・・金属同士が擦れあう音と共に火花が散る。ザン!!ごまの剣が振り切られ生じた衝撃により剣の長さの倍近くの地面が斬れる。
抉れたではなく、完全に断ち斬っている。剣に纏った衝撃波によるものであろう・・しかし其処には彩詩の姿は無い。
「上!!」
そう声を上げながらざっと顔を上に向ける。
「よく見えたね。」
嬉しそうな声はごまの頭上。
ごまの斬撃を剣によって斜めに流し、その下に圧される力を利用しながら上へ飛ぶ。するとどうなるか・・体は高速で回転し、不安定な空中で十分な重さを持った斬撃が放てる。
キィィィン!!
高く澄んだ音が響く。刃と手甲がぶつかりあっている。即座に手を上げ彩詩の斬撃を止めている。
拮抗は一瞬、ごまが押し飛ばそうと力を込めたのを使い後方へ飛ぶ彩詩。
着地と同時、左手に装備していた盾が展開、弓へと形状を変化させる。
魔力によって十三発の矢を生成、連射を敢行する。持っていたはずの剣は中空へ投げられている。放たれた矢は十二発、避けられる数ではない。
ごまの判断は大剣を振る動作。剣が纏う衝撃波によって叩き落す。数発の矢はごまの鎧に当たるが、彩詩が狙った関節の継ぎ目では無いため、簡単に弾かれる。ごまが放った衝撃波はそのまま直進、彩詩へと強襲する。最後の一矢を放つ彩詩。狙いは衝撃波の前方の地面。
矢が地面に突き立つと同時に衝撃波がぶつかる。起こったのは轟音、そして土煙。視界が閉ざされる。ごまはそのままもう一度衝撃波を放つ。土煙を断ち割りながら進む衝撃波。
彩詩が上空へ跳躍したのは衝撃波を避けるため・・・では無く、完全に攻撃のためであった。中空にはまだ彩詩が投げた剣がある。それを手にするとそのまま矢の代わりに弓へつがえ、打ち放つ。先ほどの矢とは明らかに違う速度、剣を振り切った体制のごまは迎撃はできない、そして剣は鎧を貫く威力を持っている。先ほどのように手甲で防いでも十分に傷を負わせることができる。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫