《MUMEI》
『どうも、惇が世話になってるみたいで』
「いえ、…、はじめまして、潮崎隆志と申します、惇さんとお付き合いさせてもらってます」
『……』
「……」
めちゃめちゃドキドキする。こんな事サラっと言って良いのかとかスゲー頭ん中グルグルしてきた。
惇は俺の胸に頬をくっつけたまましがみついている。
『……潮崎隆志って……あの俳優とかの?』
あ、俺の事知ってた。
ホッとした様な…
知られてない方がよかった様な…
「…はい、…」
『……マジか、……そう、潮崎君と…惇が…』
「…………」
−−−−世間体
いろいろ頭を過ぎる。
軽く瞼を閉じ、相手に聞こえない様に細く息を吐く。
背中の縫い跡が僅かに攣れた。何故か、それが心地良い。
腕の中の惇。
手の平にきつく力を入れて背骨の感触を探る。
惇の熱い呼吸。
「…本気で付き合っています」
『……………』
「男同士だけど本気で、真剣に…」
『分かってる、それは分かってる、惇は遊びで誰かと付き合う奴じゃない、潮崎君に本気で惚れてんのも分かってる、
分かってる……、
分かってるから…』
「…………っ…」
『な、会えないか、ちゃんと会って話したい、忙しいのは分かってるけど、惇の為にも…、俺達兄弟の問題に巻き込んでしまって本当に申し訳ないけど…、−−−−
ある程度惇から聞いてるだろう?俺達の事情……』
「…俺もそうしたいです、…そう言うつもりでした」
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