《MUMEI》

ドア全開、そこにいる日高に似た男。

トランクスにTシャツ、寝癖だらけの金髪。
男はドアを閉めるとベッドにいる俺達に向かい寄ってきた。
「まこちゃんどいて」
「あ?あっ!ごめん」






胡座をかいて日高の煙草を吹かすお兄様。俺はお兄様の日高とは対象的な見たくれに戸惑いを隠せないでいた。
俺もピアスしているが上から下まで隙間なくする程ではないし、金髪というより白にちかいごわついた髪、弄りすぎじゃないかって位の凝った眉に俺の学校より黒い匂いを感じた。

「俺のメイっちに手え出すなんて何処のモンだ?」
煙草を灰皿に擦りつけながらお兄様は最後の煙りを吐いた。
「…メイっち?」
「メイだよ」
「メイ?、まさか日高の事ですか?」

どうしても名前教えてくれないもんだから日高としか呼べないでいた。聖に聞いても本人に聞いてくれって言われ続けてたし。
おかげで携帯の登録も日高のまま、ベッドの中でも日高のままで。

「メイ…、あの漢字でどう書く…」

ガシャンッ!!


「ウッセエ!とっとと質問に答えろ馬鹿ヤロー!つか名前もシラネー相手一晩中ヤリまくりやがって!!テメえ俺の弟を何だと思ってんだこらあ!」

テーブルを殴った反動で灰皿が畳みに落ちた。
鋭く俺を睨みつけるお兄様。数秒の沈黙。

ガチャリ…

「ただいま〜煙草買ってきた」
日高から俺がどいた途端お兄様は日高に煙草を買いに行く様命じ、居なくなっていたのだ。
息を少し乱しながらお兄様に渡し俺の隣に座る。
早かった、5分経ってない、俺が心配できっとめちゃめちゃ走ったんだ。

俺も、こんなとこでビビってちゃだめだ


「俺の高校は〇区の青陵学院です、−−メイとは、マジで付き合ってます、俺にメイをください!」
「まこちゃん!な、名前なんで!」




お兄様は黙ったまま煙草のフイルムを剥がし中から一本出した。

立て続けに二本吸った。俺は黙ってお兄様を見据える。
いつの間にか日高は俺の膝に手を置いて、同じくお兄様を見ていた。


「メイっち」
「はい…」

「泣かされたら言え、殺してやるから」
「お兄様!!」
「兄貴!!」

「…お兄様ってあんなあ、……日高さんと呼べ」

煙草を灰皿に擦りつけ煙草を掴んでお兄様は立ち上がった。

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