《MUMEI》
陸上クラスマッチ
そして、クラスマッチ当日。


「あれ?葛西先輩って体育委員なんですか?」

「あぁ」


走り高跳びに出場するためにフィールドに来ると、記録係の葛西先輩がいた。


(やっぱり元気無いな)


その表情は暗かった。


先日、お昼休みに祐と俺達の教室に来た時に、俺はさりげなく葛西先輩に美緒さんとのやりとりについて訊いてみた。


『綺麗だけど、何かが足りない。心に響かない。よくわからないけど、向いてないと思う』


実際にはかなり余分な言葉も入ったらしいが、美緒さんの言葉をまとめると、こういう内容だったらしい。

(今回は、志穂さんの勘も外れた…か?)


俺は、凹む葛西先輩を見ながら思った。


そして、俺は


気付くと、一位になっていた。


「田中、お前陸上部入れよ」

「無理だよ、俺、演劇部だし」


僅差で二位になったのは、陸上部の生徒で、俺とはほぼ初対面だが、しつこく勧誘してきた。


「じゃ、俺、次は百メートルだから」


俺は逃げるように、早々に集合場所に移動したのだが




百メートルで、三位になった俺は、また陸上部員に勧誘され、クラスの連中がいる応援席に逃げ帰った。

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