《MUMEI》
愛は会社を救う(2)
総合商社丸兼物産・城下町支店。
駅前に建つオフィスビルのワンフロアに社員が30名。地方都市としては、そこそこの規模だ。
私は資料室の整理を担当することになっていた。
あてがわれたのは、オフィスの隅にパーティションで仕切られた8畳間ほどのスペース。
入り口以外は、背の高いファイルキャビネットに取り囲まれている。
部屋の真ん中に置かれた広い作業台には、黒表紙に黒い綴じ紐でファイルされた古めかしい資料がうずたかく積まれていた。
私はそれを整理分類してキャビネットに収めていくのだ。
まず私の前に現れたのは、丸亀羊市という総務グループのリーダーだった。
齢は40代前半だろうか。痩せ型で血色が悪く風采の上がらない男だ。
「汚い仕事で申し訳ないですねえ。無理なさらないでくださいよ」
部下の私に対して、やけに怯えたような調子の敬語で話しかけてくる。

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