《MUMEI》
決着
しかし・・ごまは手甲によって防ぐ。
キィィ・・
ごまの手甲の部分から半透明のシールドのような物体が出現し彩詩が放った剣を受け止めている。
「うわぁ!6式重装鎧だったんだ・・まったくも〜それ纏ってそんだけ動けるのごまくらいじゃん・・」
音も無く着地し、笑みをごまに向ける。後を追うように長い金髪がゆっくりと流れる。ごまは剣を彩詩の方へと弾く。
6式重装鎧、完全に守備だけに特化した鎧。対物理、対魔法に対し高い防御能力を持つがその重さゆえ完全に壁役、または直線的な突撃用にしか使用されず一対一の戦いには向いていない。鎧の重さは100キロを超えている。
そんな鎧で今までの動きをしていたことに驚いているようだ。
「そんなに驚いてるように見えないのが・・・気のせいだと嬉しいんだけどね〜」
へへへと笑いながら再び突撃体制を整える。切っ先を相手に向けた突きの体制。
先ほどと同じように右手は水平に、左腕はだらりと下げた構えの彩詩。
「受身ばかりってのも面白くないからさ!今度はこっちから!」
そう叫びながら・・言い終わった頃にはごまの攻撃の間合いの中。
ざっと距離をとろうとするごまに追いすがるようにさらに前へ出る彩詩。後退しながらでは、十分な突きは放つことはできない、そう判断し、一気に後ろへ剣を引き、その勢いを持って素早く一回転し彩詩の左側からの横薙ぎの一撃を放つごま。遠心力によって加速された斬撃は十分な一撃。
その一振りを彩詩は軽く伏せることによって回避しようとするが、剣は斜めに斬り降ろす軌道を描こうとしている。左の掌による高速の打撃。
それによって剣の腹の部分を強打し、強引に軌道を僅かに上へ変化させ空間を確保。
さらに前へ出る。右の剣は下がっている。斬撃を放つ距離は無い、そう判断する間も無く、体が動く。
打ち込んだ掌を引き戻し、ごまの胴体へ肘による打撃。本来ならばそれは意味の無い打撃。
だが十分な踏み込み、籠められた魔力、そしてお互いの速さ。それによって確かな攻撃へと昇華される。
ガッ!!澄んだとは言えない鈍い激突音を聞いたのは何人いただろうか・・・
その手ごたえに満足する間も無くごまの次の一撃が縦に疾る。
にっ!と強い笑みを浮かべ、ごまの肩に手を置き側転をするように跳躍。互いに背を向け着地。すぐさま後方に斬撃を放つ。速さは彩詩が上、斬撃の重さはごまが上。
キィィィン!!
再び澄んだ金属音が響く。
結果は拮抗といった形で表れる。力勝負なら完全にごまの勝ち。そう判断し一気に押し切ろうと力を籠めようとした・・その時だった。気が付いたのは偶然・・微かな違和感。彩詩の左手に在るはずの物、盾が無いことに気がついた・・
直後、頭に何かがぶつかる。刹那、気がそちらに向く。通常なら隙とも言えない一瞬。だがその一瞬は勝負を分けた。
剣にあった均衡が消えている。そう気が付いたころには喉元に刃があった。
「勝負あり・・かな?」
剣を下ろす彩詩。動きの余韻のように髪がなびく。ごまは大きくため息を付き、一歩後ろへ下がり兜を脱ぐ。
「流石。あぁ・・もう少し頑張れると思ったんだけどな。」
残念そうに、しかし、満足げに感想を漏らす。
「へっへ〜んだ。まだごまに負けるわけにはいかないしね〜頑張って訓練しなよ〜」
剣を鞘へ戻し、右手でピースサイン。

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