《MUMEI》
‐陸‐
手が止まっていたのはほんの少しの間で‥

小坂は答えの続きを黒板に書き始めた。

あいつ‥

先週僕を屋上に呼び出して以来何だか──‥

ちょっと落ち込んでるような気がするのは気のせいかな‥。

あの時何も答えないで教室に戻った事──‥

あいつは怒ってるのかな‥。

でも今日貰った手紙からは‥

そういう感じは受けなかったけど‥。

「‥!」

あいつが戻って来るのに気付いて‥

慌てて顔を伏せた。

≪ドクン‥ッ≫

物凄く動悸がする‥。

小坂が横を擦り抜ける瞬間──‥

一瞬時間が止まったみたいな気がした。

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