《MUMEI》

あいつが戻って行く後ろ姿を見つめて‥‥

ただ茫然としてさっきのあの言葉を思い出しとった。

『先に‥戻ってるから』

あいつ──

ウチをわざわざ教室から連れ出してくれて‥‥

自分かてホンマはしんどいはずやのに教室戻って行こうとして‥。

「新木っ」

呼びかけても立ち止まってはくれへん。

「ホンマおーきに!」

そう言うた時‥

ちょっとだけ新木が止まってくれたような気ぃした。

気のせい‥

かも知れへんけどな。

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