《MUMEI》
爆発
 やがて下の通りは鬼たちで溢れかえった。他の地域の鬼も合流したのだろう。鬼だらけだ。
 彼らは手に武器を持ち、血眼になって子を探している。
 遠くからは一斉に悲鳴や銃声、爆発音が響いてくる。
「まるで戦場だな」
呟き、ユウゴは首を振った。
「いや、今のところ虐殺か?」
 子に武器が与えられてない以上、明らかに子は不利だ。
 様子を見ていると、鬼たちが近くのビルに入って行った。
やはり、人間考えることは同じらしい。
 向かいのビルの屋上に、ユウゴと同じように下を見下ろしている人がいる。
それも、ユウゴよりも目立つほど身を乗り出して。
あれだけ背が高いビルだ。ああしないと下が見えないのだろう。しかし、自ら存在を相手に伝えるなど愚かすぎる。
 幸いなことに、ユウゴの存在はまだ気付かれていない。
 どういうわけか、鬼たちは高層ビルばかりに入っていくのだ。
まあ、階数が多い方が、隠れ場所も多い。
当然の行動だろう。

 しばらくして、バラバラバラバラとやかましい音を響かせながら上空にヘリコプターが登場した。
 その腹にはカメラを搭載している。あれで実況生中継するのだろう。
 他にも街の至る所にカメラが設置されているはずだ。
 ユウゴはヘリのカメラに映らないよう、気をつけながら下の様子を窺い続けた。
 鬼がある程度いなくなった頃を見計らい、ユウゴは屋上を出た。
まだビルに誰も来ないうちに移動した方がいい。

 一階まで降り、出口の近くで外を覗き見る。
 うまい具合に誰もいない。
 ユウゴは音も立てずに飛び出した。
それと同時に、突然すぐ後ろにそびえ立つビルが爆発した。
「おわ!」
 耳から血が出そうなほどの衝撃に、ユウゴは思わずその場にしゃがみ込んだ。

前へ |次へ

作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
ケータイ小説サイト!
(C)無銘文庫