《MUMEI》
やめて!
キスは神聖なもの。
そんな考えはこの愚かな男には到底ないだろう。
みゆきがためらっていると、短気を起こした不破野は、顔を下半身へと移動させた。
「いいよ、唇が嫌なら下の口にキスの嵐だよ」
みゆきは慌てた。
「待って、待ってください!」
「じゃあキスさせてくれる?」
「話がしたい。ほどいて」
「もういい」
面倒臭くなったのか、不破野はみゆきのいちばん敏感なところにキスの嵐!
「何するの!」
みゆきは赤面しながら叫んだ。
「待って、待って!」
しかし不破野は舌をローターのように素早く動かし、大切なところを弾きまくる!
「あっ…」
まずい。
「やめて、やめて!」
不破野は顔を上げると、みゆきにかぶさるように体を移動させ、彼女を上から見下ろした。
「色っぽい声出すじゃんみゆき」
みゆきはムッとした表情で横を向いた。
「みゆき。そんなに気持ち良かった?」
みゆきは唇を固く結び、答えない。すると不破野はまた秘部を舌技で弾く。
「あん…わかったから、やめて、やめて!」
みゆきは必死に哀願した。
こんな愚劣な男の舌で落とされたら、立ち上がれない。
不破野はまたみゆきの顔を覗き込む。
「みゆき。気持ちいい?」
みゆきは焦った。
「質問に答えないといじめちゃうよ」
彼女は目を閉じると、真っ赤な顔をして囁いた。
「気持ちいい」
しかし不破野はしつこい。
「イッちゃう?」
「え?」
みゆきは我を忘れるほど憤っていたが、今は無傷で解放されることが最優先だと思い、しおらしくした。
「そんな恥ずかしいことは言えません」
「言わすよ」
みゆきは不破野を敵意のない目で見つめた。
「男の人は平気でも、女の口からは言えません。わかってください」
「かわいい!」
不破野の目が光る。
「みゆき、目を閉じて」
従うしかない。みゆきは目を閉じた。
「うぐ…」
唇を奪われてしまった。しかも舌が侵入して来る。
ここで拒絶すれば、何をされるかわからない。
みゆきは自分の身を守るために、自ら舌を絡ませた。
不破野も乗ってきた。
口づけのあと、不破野はみゆきの耳もとで囁いた。
「みゆき、嬉しいことしてくれるじゃん。誠意は伝わったぜ。許してあげる」
不破野はあっさり両足をほどいた。
解放される!
みゆきは内心ホッとした…のも束の間、不破野が笑顔で睨む。
「でも、みゆきしっかりしてるから、解放したらその足で警察直行だろ?」
「まさか」みゆきは弱気な表情で言った。「許してくれたのに、警察に言うわけないじゃないですか!」
「ホント?」
「本当です。信じてください」
みゆきの必死さがかわいい。
不破野は自分の携帯電話を取り出すと、裸のみゆきに向けた。
「みゆき、一枚撮ってあげよう」
みゆきは蒼白になり、小声で哀願した。
「写真だけはやめて。一生のお願いですから」
不破野は携帯電話を引っ込めた。
「わかったよ、みゆき」
両手もほどかれて自由の身。
「服はそこにあるぜ」
みゆきは急いで服を着た。
バッグを手にすると、ドアの前まで行き、不破野を見た。
「みゆき、また会いたいね」
みゆきは軽く会釈すると、部屋を出た。
(忘れよう)
監禁は重罪だ。だから解放されたからといって、あの卑劣な男に感謝なんかしない。
みゆきは自分に言いきかせた。
とにかく無事ホテルを出れたことがすべてだった。
翌朝。
みゆきはベッドの上でうつ伏せになりながら考えていた。
下着にTシャツのみのセクシーなスタイルだ。
みゆきは忘れようにも、昨夜のことが頭から離れなかった。
何とか初エクスタシーだけは守ることができた。
でも、かなり悔しい思いもした。高い授業料だった。一瞬の油断が取り返しのつかない事態を生む。
みゆきは深く反省した。
『やめて!』
信じられない自分の悲鳴。
本気で感じてしまった。
情けない。
「忘れよう」
みゆきはベッドから出た。

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