《MUMEI》
今年は堂々と
キャアァーー!!


(な、何だ?)


その歓声は、陸上競技場の入口付近から聞こえた。


「騒がしいわね、何事?」


俺の隣で弁当箱を開けようとしていた志貴が、眉間にしわを寄せた。


今は丁度昼食の時間だった。


「見てきます!」


命令されてもいないのに、拓磨が歓声と、徐々に集まる人々の中に向かっていった。


その集団は、入口から三年生の応援席に移動し始めた。


そして


あるクラスの前で止まった。


「何か… … わかったかも」


俺の隣で志貴がポツリと言った。


「俺も」


そして、俺達は弁当を食べ始めた。


「「あ〜…」」


真司と守も、やっと理解したらしく、箸を動かし始めた。


そんな俺達の後ろを、数名の同級生達が通り過ぎていった。


彼女達は口々に『キング』と言っていた。


そう。


今年のキングは、もうヘタレではないのだ。


愛しい彼女に会う為なら、周りの騒ぎなど気にしないのだ。


集団は、希先輩の前で止まっていた。


その後、希先輩と柊は木陰に移動し、二人きりのランチタイムを過ごしていた。

かなり注目されていても動じない柊は、やっぱりキングに見えた。

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