《MUMEI》
俊彦さん…じゃない!
「じゃあ、希。俺、行くから。今日は打ち上げ出るから一緒に帰れないんだよね?」


(だ、誰だお前!?)


希先輩を呼び捨てにし、名残惜しそうに見つめる柊に、俺と志貴は唖然とした。

「…うん、また明日ね」


赤くなってうつ向く希先輩

「また明日」


ギュッ!


!!


柊が希先輩を…抱き締めた。


「ちょ、柊…」

「充電」


…その、長い抱擁を見つめながら、志貴が呟いた言葉に、俺達は深く頷き納得した。


「俊彦さんと蝶子さんみたい」


しかし、次に柊がとった行動で、俺達はそれを否定する事になる。


「祐也」

「…へ?」


(何で、そこで、俺?)


俺は先程からかなり間抜けな顔をしていた。


「クラスマッチ、絶対優勝してね! 大丈夫、祐也ならできるよ」

「はぁ…」

「あと祐也が出るのはリレーだけだよね!」

「あぁ、うん」

「転ばないようにね!」

「こ…」

「あ、それから今日は紫外線強いから、日焼け止めちゃんと塗るんだよ!」

「ひ… …へ?」

「じゃあ!」


そして、柊は俺に日焼け止めをそっと手渡し、爽やかな笑顔と共に去っていった。


…後には微妙な空気だけが残った。

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