《MUMEI》

「ぁ‥、ご、ごめん」

慌ててタオルを受け取る。

新木は席に戻ろうとして‥‥

一瞬動きを止めた。

「枝折も‥ありがとう」

「‥ぁ‥、うん」

『ありがとう』て‥

ホンマに嬉しい言葉やな──。

そない思てると‥

新木は本をカバンから出して開いた。

「───────」

新木は本を読み始めると没頭して何も聞こえへんくなるらしい。

あくまでウチの推測やけど──。

ホンマはもっと別の理由があるんかも知れへん。

せやけど今は訊かんとこ‥。

追い詰めてもうてもしゃーないし‥。

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