《MUMEI》

「もう無理でふ……」

幾ら甘いものが好きでも、胃袋に限界がある!


「しょうがないね僕が……」

千守さんはそう言って包みを開け、キャラメルを食べて下さった。

綺麗な唇にキャラメルが吸い込まれていく。

「…………食べさせてあげる。」




     ?!


「むっむーーーーっっ!」

口の中を生キャラメルが移動した。

なんてことを……!
は、吐くう…………!


「……ぅえほ」

何?
今の何?

胃液が鼻に上る痛さ。
千守さんは床の吐き出された生キャラメルを拭いてくれた。

「吐き出した分まだ入るよね?」

にんまり、千守さんにキャラメルの山を突き出された。





な……なんなんだ……!

「ひどい……親にも入れられたこと無いのにっ!」

あんな風にレロレロにするなんて!


「あはは、タマ可愛いな。あれはドイツ式の励まし方だよ。さっき挫けそうだったよね?」

千守さんたら、ドイツの人だったんだ……。


「応援して下さったんですね……」

僕ったら誤解して……、兄想いな千秋様の弟さんだ。

そんなやらしい人な筈無いもの、僕ったら馬鹿、本当に馬鹿!


「珠緒ったらどきどきしちゃった?ごめんね?」

千守さん得意の不意打ちだ、背後を羽交い締めで固定される。


「どきどきよりか、ちょっと傷付きました……、いきなりのことだったので……でもお優しいご厚意を下さったんですね。流石千秋様の弟様です。」

でも、やたらに密着しているような気が。あと、いっぱい触られている気が。






「……………………そっかあ、つまらない。」


「……ハイ?」

何か言われたようだが聞き取れなかった。

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