《MUMEI》

次の日、周哉と秋穂が学校へ向かっていると、
「おーい、待って待って」
後ろから昇が走ってきた。
「ハア、ハア、ふうー。おはよ、周哉と麻耶ちゃ、っじゃなくて秋穂ちゃん。ゴメン、間違えた」
「よお」
周哉は普通に返事を返すが、名前を間違えられた事が、秋穂は気になった。
「あの・・・、今私のこと"麻耶"って言いましたよね?それって、誰ですか?」
その言葉に、昇はちょっと驚いた。
「おい周哉。お前まだ言ってなかったのかよ?」
「まだ言ってないけど」
「何で?」
「いや、何てゆうか、タイミングが無かったっていうか」
「あの、一体何の話を?」
周哉と昇の話に秋穂が割り込んできた。
「まあ、家庭の話は二人でしなよ。俺は先行ってるから」
そう言って、昇は学校へ向かって走っていった。

「で、話って何なの?」
秋穂が改めて聞いてくた。
「別に隠してたって訳じゃないんだけど・・・、実は、俺、妹がいたんだ。もう死んじゃったんだけど。その妹の名前が"麻耶"って言うんだけど。それでさ、その麻耶が秋穂にそっくりなんだ。生き返ったんじゃないかってくらい。嘘っぽく聞こえるかもしれないけど、本当なんだ」
周哉が話している間、秋穂は何も言わなかった。
しばらくすると秋穂が、
「そうなんだ」
とだけ言った。
その後も、周哉と秋穂は何故か、何も話さぬまま歩き続けた。

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