《MUMEI》 愛は会社を救う(5)他の女子社員同様グレイの制服を身に付けてはいたが、170cm近いスリムな長身は見栄えがした。髪はウェーブのかかったロングヘア。切れ長の目に縁無しのメガネをかけ、怜悧な薄い唇がいかにも「お局」という印象のハイミスだった。 「上司の私だけでなく、異動で各地を回っている支店長や副支店長まで、彼女に頭を下げて教えを乞わないと何一つ決められないのです」 「まあ考えようによっては、そういう人材こそ意思決定の現場に必要だとも思いますが」 「おっしゃるとおり。ところが…」 丸亀はさらに顔を曇らせた。 「彼女は過去に何度も昇進を拒絶しておるんです」 昇進を拒絶する… 今でこそ社員との話し合いで昇進拒否に応じる企業はある。しかしそれはあくまで家庭の事情などを考慮しての措置だ。一社員の勝手な希望で同じポストに留まり続けるなど、通常の人事では考えられない。 前へ |次へ |
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