《MUMEI》

新木はまだ目ぇ閉じとる‥。

「───────」

どないしよ‥。

話しかけるべきか‥

黙ってるべきか‥。

「──碧いね」

「ぇ」

「空──」

「‥ぁ、うん‥」

ぎこちなく答えると‥‥

新木は流れていく雲を見つめた。

「‥なぁ‥」

訊きたい事は仰山ある。

せやけどいざ訊こうとすると上がっててもうて‥。

丁度その時チャイムが鳴った。

「──戻ろうか」

新木が立ち上がった。

ウチも慌てて立ち上がってスカートの埃を払った。

緊張から開放されてホッとしたのと‥

何も訊かれへんくて後ろめたいんとが一緒になって‥‥

何か変な気分やった。

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