《MUMEI》

「えっ?じゃあもう学校行っちゃうの??」

心配そうに兄を見つめる妹の顔は、一年に五回も告白されるという一級品である。

大きく透き通った目、ほんのりとピンク色の頬、肩まで下ろされた髪の毛は驚くほどサラサラで、動くたびにフワフワと漂うシャンプーの香は男を虜にする魅惑の香である。

要するにかわいいのだ。

以上なほどに。

「ああ、帰りにミズドに寄るから大丈夫だよ。」

「あっ!どうせミズド寄るなら、私にも買ってきて〜!」

妹も好きなミズドとは、かの有名なドーナツチェーン店にそっくりな店である。
正式名称は『ミズノ ドーナツ』である。

店主の水野陽一(四十五歳)はナイスネーミングだと押しているが、誰もがいつか本家からクレームが来るだろうと言っている。

まあ、地元ではおいしいと評判がいいのは本当のことなのだが。

「おう、いつものチョコ味だろ?」

大急ぎで歯を磨き、顔を洗いながら答える。

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