《MUMEI》 俺は、無我夢中でひたすら走っていた。 悔しい。 あまりに無力な自分がとても歯がゆく感じられた。 気が付くと、生き生きと生い茂った木々に囲まれていた。 葉の間から零れ出た、幾つもの光りの筋がとても綺麗だ。 どうしようもなくなって、 その場にへたりこむと、 目尻が熱いことに気が付いた。 いつの間にか泣いていたのだ。 悔しい…恥ずかしい……。 今は人間ではないが、 この世界に来るまでは明らかに人間だったのだ。 その時に少しでも気付く機会があった筈だ。 大地の悲鳴に。 レギジオスの苦痛に……。 そして同時に自分自身に対しても、 怒りを覚えた。 ニュースで見たじゃないかよ……。 道路で見掛けたじゃないかよ……!! どうして無心でいられたのだ? 情けない。 「こんな俺が、この国の王になるなんて……。 そんな資格ある訳ないよ。」 「いえ、そんなこと御座いませんよ。」 驚いて振り返ると、 セビアが心配そうな面持ちで、 俺を見下ろしていた。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |