《MUMEI》
「あれ…?声が…遅れて聞こえるよ?」
「何かできるの?」
「は、はい!掃除と…洗濯と…家事はなんでも」リーズはピンと眉を上げ、アルの方を見た
「君は?」
「お、オイラは…」
「力仕事…だろ?」
とっさのフォロー、実際アルに力があるなんて知らないが、何かしら役目を与えないとまずい
「…いいわよ、ちょうど料理人や雑用が欲しかったしね」
姉弟の顔がパァッと明るくなった。シーラの目には涙すら浮かんでいる。
「全く…お人好しね」
「ありがとう」
その時、後ろからパチパチと拍手が聞こえた。
「大変微笑ましい光景だが、私の紹介はまだかな?」
振り返ってみると、鍔の長い帽子を被った芸人が1人…
しかし整った顔立ち、どことなく気品を感じさせる彼は、ただの芸人ではなさそうだった。
突如、芸人はバッと身を翻した。
俺はとっさに身構えてしまった。
出てきたのは…人形
「あれ…?声が…遅れて聞こえるよ?」
俺は目の前の光景に唖然とした。
彼は確かに口を閉じているのにはっきりと声が聞こえるのだ、そして人形はまるで喋っているかのような錯覚に襲われる。「す、すげー…」
シーラとアルも見たことのない芸に心奪われていた。
「初めまして、私(わたくし)腹話術師の旅芸人アルバート・トリニティと申します。以後お見知り置きを」
アルバートは帽子を取り深く礼をした。
「何やらリーズさんはこの地域を統べるギルドを目指しているとか、私の芸を広めるためにも協力させていただきます」
こうして、初日の勧誘で心強い(?)仲間が入った。
今日の夕食は早速シーラの手作りシチューだった。
「ほぅ、私各地を旅して来ましたがこれは初めて口にする味です…とても美味しい。」
「そんな…お世辞はやめてくださいよぅ」
初めて褒められて恥ずかしかったのか、シーラはおぼんで顔を隠した。
お世辞じゃ無く本当に美味い…
「んぐぐ…シーラちゃん合格!ついでにおかわり!」
「オイラも!」
「では、私も」
むむむ…流石にこれだけ美味いと何杯でも食べられそうだ。
「俺もおかわり!」
「カスティ、あんたレディーファーストでしょ!」
「育ち盛りのオイラが先だよ!」
「はい、どうぞアルバートさん」
「あーっ!」
その日は、激しいシチュー争奪戦の夜になったとさ
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