《MUMEI》
‐茉莉‐
夏休みが始まって6日目の木曜日。

ウチは団地の中を彷徨うてた。

朝からずっと‥

あいつの家を探しとる。

どうしても‥

あいつに届けたいねん。

この恋文を‥。

雨の日にウチを送ってくれた時──

あいつはウチの家とは反対の方向に歩いて行った。

その後どっちに行ったんかは分からへんけど‥‥

2丁目のどこかやて事は確かやねん。

1軒づつ表札を確認して見て回った。

せやけど『新木』て名字はまだ見つからへん。

あいつの家は‥

一体どこにあるんやろ‥。

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