《MUMEI》

堤防の側まで来ると‥

さっきまで穏やかやった風がちょっぴり強くなった。

見渡したけど‥

砂浜に人影はあらへん。

ウチ独りだけ。

≪ザァ‥≫

聞こえてくる波の音。

綺麗な水の色。

「───────」

あいつが海を好きな理由──

分かるような気ぃする。

浜辺の方に降りて‥

さらさらした砂の上を歩く。

「‥小坂‥?」

「‥ぇ」

一瞬固まってもうた。

ウチのすぐ後ろに‥

新木がいたから‥。

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