《MUMEI》
関係 4
情事が終わり、落ち着いた尚之の目から涙がこぼれた。
「ごめん。」と尚之が謝ると、はるかは目を丸くした。
「なんで謝るの?」
「だって…あんなに無理矢理したし…。」
「でも、わたしが望んだことだよ?尚ちゃんの事を責めたりするつもりはないから。」
はるかの言葉に、次は尚之が目を丸くした。
「これは最終手段。これでも尚ちゃんがわたしに振り向いてくれないなら、今日の事は無かった事になるの。わたしは尚ちゃんを諦めて新しい恋を探す。尚ちゃんは今までの生活に戻るだけ。」
「そんな無責任な事出来ない…。」
「無責任なんかじゃないよ。好きなひとに振り向いてもらいたいから、わたしは尚ちゃんと交わったの。たとえほんの一時でも、好きなひとがわたしを見てくれているっていう事実が欲しかったの。だから尚ちゃんは何も気にしないで。」
この時のはるかの言葉を、尚之は今も鮮明に覚えていた。この言葉を聞いて、尚之は何も言えなくなってしまったのだ。尚之の部屋は、静寂に包まれていた。

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