《MUMEI》

「―――樹、」
「……シカト。」
口に出してみたりして。

「おぉ、ソレは誰に対する物言いだ?
俺の言葉の意味、理解してないのか?」
一発殴られてもおかしくは無いだろう、とでも言いたげだ。




俺に非は無い!今日は教師の健康診断で2時間目で帰れる筈だった。

1時間目のホームルームが面倒で、2時間目の数学まで保健室で休む(サボる)予定だったが混んでいて入れず、たまたま鍵が開いていた屋上に身を寄せた。

屋上から教室に繋がる階段は外から見るとちょっとした小屋になっている。

後ろに設置されている下半分が切れている梯子へ飛び乗り、よじ登って、定位地へ。
流石、雨風に曝されていただけはある、汚い。
砂っぽい。

…………………が、眠い。贅沢は言っていられなかった。





結局、睡眠欲に任せ、夕方までたっぷり寝た。
その間、アヅサは俺の眠っているのを黙って見ていたのか、悪趣味だ。

全く。アヅサ……、お前にとっては雀の涙程にも気に掛からない事なんだろうが、俺が数学をサボることは全裸で南極横断する行為に匹敵するというのに。

アヅサはそんな俺には相も変わらず無関心で別の事に注意を向けていた。

屋上の小屋の屋根の下、フェンスの無い縁。

「……ほら、良く見ろよ、あれは存在している?」
アヅサが指す先に、

視線を移す。

人影?



 嗚呼! 神が降臨する

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