《MUMEI》 「あんた‥来てたん‥?」 「──さっき来た所」 「そ、そか‥」 いきなり鉢合わせてビックリしとるせいか‥ 言葉がぎこちなくなる。 「──海、見に来たの‥?」 「‥うん‥ちょっと来てみたなって‥」 ほしたら新木はクスッと笑うた。 「じゃあ僕と同じだ」 「ぇ‥?」 「時々来るんだ。こういう日の海は穏やかな気持ちになれるから」 「‥静かな海が好きなん‥?」 「──うん。だから今日も来た」 新木はゆっくり浅瀬に近付いて‥ 風の音に耳を澄ませた。 その後ろ姿を見つめて── ウチの鼓動が速くなる。 前へ |次へ |
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