《MUMEI》
「待たせたわね!」
飛びかかってきたゴブリンを、アルバートさんは素早く薙ぎ、払う。
俺はすかさず剣の一撃を叩き込むが、刀身がボロボロのせいでダメージを与えられない…
身を翻したゴブリンは再び突進してくる。
「カスティ君、右!」
ギリギリで右へ回避、低い音が頬を掠める。
ゴブリンの数は3匹、4匹と増していく…
「キリがないぞ!」
一匹の攻撃の避し際に縦振りの一撃を放つ
ビィィンと音が響き、刀身が半分の所で折れた
「げ…」
が、弾け飛んだ片方の刃はアルバートさんを囲む一匹の頭に突き刺さった。
「助かりました!」
ずげーマグレなんすけどね…
ってヤバいぞ!
武器を無くした俺にゴブリンはにじり寄る。
「てやーっ!」
威勢のいい声と共にいつか見た飛び蹴り。
「リーズさん!」
「手に持ってるやつ、貸しなさい」
折れて使い物にならなくなった剣を渡す。
そんなのでどうしようっていうんだ…
「カスティ、ちょっと時間稼ぎお願い」
「どうやって…」
「注意を引きつけて逃げ回るのよ」
逃げ回るとはみじめだけど、文句を垂れてる場合じゃないので俺は足元の石を投げゴブリン達を挑発した。
「オラオラ、俺が相手になるぜ!!」
あっけなく引っかかり、8匹のゴブリンが一斉にこちらに向かってくる。
って、ちょ、待て数が多いぞ!!
俺は命掛けで逃げ出した。
「はぁッ!」
アルバートさんの方は片づいたみたい、ただの腹話術師とは思えない働きだ。
「師匠ーッ!」
ふと、木の根に足を取られ倒れる。
8匹のゴブリンは俺をリンチするのか、円陣を組む。
「ぼ、暴力はいけないよ…ねぇ?」
俺はいろいろと覚悟した。
その時
「待たせたわね」
リーズさんが立っていた、手に持っている折れた剣はさっきと明らかに違うオーラを放っている…
「さぁ、食事の時間よ!火竜ちゃん」
彼女の呼びかけに応え、折れた刀身に纏うオーラはたちまち巨大な炎の竜へと姿を変え、一瞬でゴブリン達を飲みこんだ。
「ごちそーさん」
ドラゴンはそう言って消えた。
喋れるのかよ!
「私の腹話術です」
「紛らわしいことすんなよ…」
それにしても、リーズさんの魔術初めて見たけど、すごすぎだろ。
気付けば、リーズさんはその場に倒れていた。
「!?リーズさん!」
「はは、ちょっと久しぶりに使ったから反動がね…」
そう言ってリーズさんは気を失った。
「どこか安全に休める場所を探さないといけませんね…」
方向もわからないままに俺達は歩き出した。

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