《MUMEI》
噂の忍ちゃん
それは、守の何気ない一言から始まった。


「なあなあ祐也」

「ん?」

「文化祭、忍ちゃんも一緒に行けないのか?」


『忍ちゃん』


その単語だけで、顔が引きつるのがわかった。


「あ、あ〜 忍、は、忙しくて…」

「部活でもやってるのか?」

「いや〜」


(部活じゃなくて執事やってるんだよな)


どうやら守は俺の『彼女』の『忍ちゃん』は、普通に同じ高校生だと思っているらしい。


「忍さんは社会人よ」


俺の斜め前の席の志貴が振り返った。


「マジ? 年上かよ」

「あ〜うん」


守は俺の後ろの席で、身をのりだしてきた。


俺は、守の方を向いていたが、二人の姿が見えるように体勢を変えた。


「土日も仕事なのか? そんなに会わなくて、ダメになったりしないだろうな」

「今のところ、大丈夫」


聞耳を立てていたのか、志貴の隣


つまり、俺の前にいる拓磨が振り返って質問してきたので、俺は苦笑しながら答えた。


「写メ無いの?」

「無いよ」

「一回位紹介してくれよ」

「何でそんなにこだわるんだよ」

「だってさ…」


守は、『忍ちゃん』に会いたい理由を説明した。

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