《MUMEI》
忍の家族
「忍、妹いたんだ」

《まあな。紫(ゆかり)なら、お前の彼女の忍ちゃんの条件を満たしてるだろう?》

「紫っていうんだ…」


俺は、改めて写真の女性を見つめた。


(やっぱり忍に似てないな)

それに、父親の護にも似ていない。


《紫は、母親似だ》


俺の考えを読んだようなタイミングで、忍が説明した。


「俺も、親に似てたりするのかなぁ…」

《…》


俺の呟きに、忍は答えなかった。


俺を傷付けて捨てて、何処かに消えた母親。


全く知らない、多分外国人の父親。


《…知りたいのか? 今更》

「…う〜ん」


正直、気になる時はある。

周りは普通に両親がいるし

たまに、母子家庭の生徒がいても


俺とは、やっぱり違う。


俺は、親の愛情以前に、存在そのものを知らないのだから。


(でもな〜)


《知りたいのか?》


忍の声が低くなった気がした。


「…いいや。俺は」


(俺には、旦那様がいたから。旦那様が親みたいなもんだし)


《…それでいい》


俺の言いたい事が伝わったらしく、忍はそれ以上言わなかった。


(あ!)


そして俺は何故忍が自分の写真を送ったのかを慌てて訊いた。

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