《MUMEI》

「木下、大丈夫か?」

東屋にも悟られるくらいの落ち込みようだったか。

今時期は乙矢も忙しいし、あまり心配かけられない。
乙矢は乙矢の時間があるもの。


「んー、ちょっと保健室でも行ってくる。」

体調不良じゃないけど、七生の席が視界をちらつくと集中出来ない。

……どこにいても七生を思い出してしまう。


「木下、どうした?」

廊下の隅で座り込んでいたのを先生に見られてしまっていた。


「靴紐を結んでいただけですから。」

俺はそんなに弱々しく見えるのかな……


「本当か?お前はすぐ溜め込む癖があるだろう。」

指摘されてしまったか。


「大丈夫です」

大丈夫なはず無い。
部活の顧問でもあり、過去にクラスの世界史を担当されただけある。
俺の不調が読めるみたいだ。


「木下、受験生だからって根詰め過ぎるなよ」

前髪を払われた。
この癖はキスするときの…………、いや考えるな、考えるな。


「根詰めてはないですよ……自分。そんな、」

泣きそうだ。


「具合悪いのか?」


「ええ、だから保健室に行きます……」

額に手を置かれた。


「熱は無いな、冷たいくらいだ。」


「ちがう……」


「木下?」

七生はもっと体温が高い。
違う、
そんなこと考えたい訳じゃ無い!


「……はっ、」

涙が出る……!
逃げようとしたら二の腕をしっかり掴まれて身動きが取れない。


「どうした、生理か?」


「はあ!?」

なんでだーーーーーーーーーーーーーー!?

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫