《MUMEI》
契約
さて──朝食の支度が出来ました。

アンリ様を起こして差し上げなくては。

軽くノックをして扉を開けると、アンリ様はベッドの上でまだぼんやりとしているようでした。

「ぁ、おはよう」

「御早うございます。御気分は如何ですか?」

「うん、いつもと同じ」

差し込む光に目を細めながら、アンリ様は答えました。

「今──窓を開けますね」

「昨日も来た?」

「‥?」

「吸いに──」

「はい」

微笑を浮かべて僕が言うと──、アンリ様は苦笑してベッドから降りました。

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