《MUMEI》

8月にはなったけど‥まだそないに暑い訳やない。でも‥

何となく海に行きたい気分になった。

家を出て団地を抜けて──

堤防に向かって歩く。

ほんの少しだけ‥

期待を抱きながら。

あいつがいるかは分からへん。

でもあいつが好きな場所やからやろか‥

急に行きたなった。

相変わらず人はいーひん。

あいつも‥。

「‥帰ろかな‥」

「どうして‥?」

「‥!?」

「もうすぐ夕暮れだから──見て行ったら?」

「新木‥」

少し前にも会うたはずやのに‥

何だかむっちゃ久し振りな気がした。

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