《MUMEI》

アンリ様が僕に逆らわない──それには、僕がアンリ様と交わした契約も関係しているようです。

その契約については、初めて僕が執事としてここへやってきた日に溯ります。

『本当‥?』

『はい。御命令は何でも承ります。その代わり──‥』

『その代わり‥?』

『僕と契約を』

『契約‥?』

『はい』

『どんな‥?』

『御命令を聞く代わりに──報酬を頂きたいのです』

『報酬‥?』

アンリ様はキョトンとしながらも──

『いいよ、契約してあげる』

直ぐに頷いて下さいました。

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