《MUMEI》

「──じゃあ、またね」

「ぅ、うん‥ほな‥また」

ちょっぴりぎこちない言葉を交わして──

お互いに別方向へ歩き出す。

「──小坂」

「‥ぇ」

「──呼んでみたくなった」

「‥ぇ‥」

訊き返す間もなく‥

新木は歩いて行ってもうた。

小さくなって行く後ろ姿は──

いつの間にか見えなへんくなってもうてた。

もう陽は暮れて──

頭の上には星空が広がっとる。

せや‥

手紙をまだ書いてへん。

何て書こか迷うてたけど──

今やったら書けそうや。

どの便箋に書こうかな──。

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