《MUMEI》
祭の服
数日後


明皇文化祭当日。


激しく目立つ団体の中に、俺はいた。


「…訊いてもいいか?」

「いいわよ」


志貴は、かなり機嫌がいい。


履いている下駄を軽やかに鳴らしながら、歩いている。


それに続く俺達も、下駄だ。


そして


「何で俺達皆浴衣なんだよ?!」


思わず叫んだ俺に、志貴はサラリと告げた。


「祭だから」

「高校の文化祭だろ?」

「まあまあ、祐也」


着物屋の守は、余裕の表情だった。


志貴の浴衣が見れて鼻の下が伸びている拓磨に、もちろん文句は無い。


「涼しくていいじゃん」


いつでも余裕な真司は爽やかに笑う。


唯一、頼みの綱の希先輩は…


柊に会った時の為に、念入りに身だしなみをチェックしていて、俺の叫びは聞いていなかった。


「それに、浴衣なら、微調整できるし」

「てっきり洋服だと思ったのに、何で浴衣なんだよ」

浴衣にTシャツやタンクトップはおかしいから、俺は背中の刺青にいつもより注意しなければならなくなっていた。


(男物で良かったけどな)


何とか一人で着れたから、それだけは良かった。


「いいじゃない。楽しみましょう」

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