《MUMEI》
燃えよ、毛
「珠緒、家の誕生会のとき来ていたね。千秋兄さんてばこんなイイモノ独り占めするなんて狡いや。」

伸びた前髪が引っ張られた……。
蝋燭が近い……!


「あの、僕、僕これは……これ、わかめです!」


「ふ、ふふ、あははははははははは、わかめって焼いたら美味しいかな?」

蝋燭が近い、近い!
かつて、千守さんがこんなに生き生きしていることがあったのだろうか?


「やらああ!熱いです、熱いですぅ!わ、わかめは煮るものです!」

燃やされる……気がする!


「そうかあ、釜茹、知ってるかい?」

千守さんの碧い瞳は冷たい感じをさせない。
それは、ガスバーナーが高温になったときの青い炎を思わせるからだ。


「かまゆで?」


「人間をぐつぐつ煮え滾る熱湯の中に放り込んで煮詰めることだよ?」

千守さんたら、なんて優しそうに微笑むんだ。
今、一瞬茹でられていいと思いかけた……!


「うわああ、人間が煮詰められると死んじゃいますね……」

負けるな僕、千守さんに引きずられるな!


「どうかな?美味しいかもしれないよ。
僕ね、可愛いもの大好きなんだ。――――――それはもう食べちゃいたいくらいに。」

舌なめずりされた、千守さんに食べられちゃうのか僕は……

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