《MUMEI》 アンリ様が僕を呼び出されたのは、食器の片付けが終わってすぐの事でした。 「あのね、ちょっと‥気になってるんだけど‥」 「はい、何でしょうか」 訊き返すと、アンリ様は考え深げに腕を組んで暫く唸っていました。 「契約は‥私が何でも命令出来る代わりに──私の血を貰うって事だったよね?」 「はい、そうです」 「それは──私の血を飲まなきゃ生きられないから‥?」 「──はい」 ですから僕はこの御方の執事になる事を選びました。 アンリ様のように純度の高く甘い血を持つ人間はそうはいません。 その血を欲するが故に──‥僕は此処で働いているんです。 前へ |次へ |
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