《MUMEI》 ≪ザ‥≫ 河原に来て立ち止まる。 「ねぇ‥」 「ぇ」 「ありがとう」 そう言われてビックリした。 何も答えられへんでいると‥ もういっぺん『ありがとう』て新木は言うた。 ウチ‥ 何かお礼言われるような事したやろか。 「──ぁ」 貝殻の事かも知れへん。 せやけどあれかてお礼言われる程のもんやないし──‥ ほな何やろ‥。 新木の横顔を見つめながら考えとった。 一体何のお礼を言うたんやろ‥。 不思議やけど嬉しかった。嬉しくて── 「おーきに」 気がついたらそない言うてた。 新木はちょっとだけこっちを向いて── 「──うん」 ほんの少し笑うてくれた。 前へ |次へ |
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