《MUMEI》 「ここも──結構ええとこやな」 「──静かだし、ね」 「───────」 ウチが横顔を見つめとると── 新木は川縁を歩き出した。 何気なく後を付いて行く。 「──良かった」 「ぇ‥?」 「──元気そうで」 「‥‥ぁ、うん‥、新木も‥」 「──小坂」 新木がいきなり立ち止まったから‥ 危うくぶつかる所やった。 「‥何‥?」 「──‥‥‥‥‥」 新木は黙ってから── また歩き出した。 何も言わんと。 でも何となく嬉しかった。 『──小坂』 そう呼んでもらえたんが。 前へ |次へ |
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