《MUMEI》

「庭園を散策なさりますか?」

問い掛けると、アンリ様は少しこちらを向いて静かに首を左右に振りました。

「ううん、今日は止めとく」

「お元気が無いようですが──どうされました?」

「別に、何にもないけど‥」

そう仰ったお嬢様ですが、やはり何処かいつもと違うような気がしてなりません。

やはり不安なのでしょうか。

僕がヴァンパイアだという事が──。

「ご安心下さい、僕は──」

「分かってるよ」

アンリ様は微笑を浮かべると、暫く窓の外を眺めていました。

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