《MUMEI》 午後3時。 チョコレート色の扉を2度、軽くノックすると、 「今行くね」 そう返事が聞こえたと同時に、薄手のカーディガンを羽織ったアンリ様が出てらっしゃいました。 「今日はちょっと寒いね」 苦笑しながら、アンリ様は白い両手を握り合せて僕の後に続いて歩き出します。 「ねぇ、リュート──」 「はい‥?」 少し振り返るとアンリ様と目が合って‥少し妙な気持ちがしました。 「私の血って美味しいの‥?」 ふいに投げ掛けられたその問いに── 「甘いんです」 そう答えると、アンリ様は更に不思議そうな表情をしました。 前へ |次へ |
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