《MUMEI》

「‥‥‥‥ごめん」

「ぇ‥?」

小坂は濡れたスカートの裾を絞りながら‥

不思議そうに僕の方を見た。

「何で謝るん?」

「‥‥‥助けられなくて──ごめん」

「助けてくれたやん」

小坂は笑顔でそう言った。

どうして笑っていられるんだろう‥。

「大丈夫‥?」

「?」

「ずぶ濡れ‥」

「平気だよ。──それより‥帰って着替えた方がいい」

「ぁ‥、うん‥、新木も──」

「僕は大丈夫だから」

「‥‥‥、分かった‥」

小坂は少し悄気た顔をして歩き出した。

最後にもう1度──

『おーきに』‥

そう言って‥。

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