《MUMEI》

アンリ様はローズティーに角砂糖を2つ入れると、軽くかき混ぜてからゆっくりと飲み始めました。

「美味しい──」

ティーカップを一度ソーサーに置くと、今度はフィナンシェを一口。

口元を綻ばせて、また一口。

「お気に召されましたか」

「うん、とっても」

アンリ様はそう答えて、再びティーカップを持ち上げます。

「──ねぇ」

「はい、何でしょうか」

「紅茶が終わったら、庭に出てみてもいい?」

「はい、勿論」

気が変わったのでしょうか──。

先程は拒んでいたようなのですが、アンリ様は庭園へ出たくなったようです。

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