《MUMEI》

(…今なら対等だと思ってたけど、


甘かった。


ブランクのある猪狩なら、


ハンドを捨てた猪狩なら、


太刀打ち出来ると思ったんだけど…


俺も、


1回ハンドを捨ててるんだよな…


またやってるとはいえ、


クロさんが来るまでは遊んでたようなもんだ。


…差は、


変わらないのか。)


「ユキヒロさん!!」


「え?」


ボーっとしていたユキヒロ。


椎名のパスを見ていなかった。


ユキヒロの手に当たり、


こぼれるボール。


当然、


クロがカットに走る。


「速ッ攻!!」


ボールを拾うクロ。


そのままの勢いでコートを駆け抜ける。


追い付いたのは椎名だけだったが、


(はや…)


一瞬で抜き去る。


「ナイッシュー!!」


クロのシュートが決まる。


4対0。


(どうなってんだよ…


さっきからフリーばっかじゃね〜か…)


キーパーの村木は、


不甲斐ないオフェンス陣に、


イラつきを覚えていた。

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