《MUMEI》 僕が止めた時にはもう既に、その白い指先は薔薇の棘に触れていました‥。 「‥っ!」 アンリ様は慌てて手を引っ込めると、恐る恐る指先を見つめました。 「‥ぁ‥」 たちまち赤い玉が浮き上がるのに気付き、顔色が青褪めていきます。 目の色が変わりそうになるのを抑えながら、 「今、手当を‥」 手持ちのガーゼで止血をして消毒を施すと、包帯を巻いて、一度アンリ様をベンチに御連れしました。 「まだ‥痛みますか」 「ううん、もう平気」 そう仰って微笑んだアンリ様は、どこか後ろめたげな表情をしているように見えました。 前へ |次へ |
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