《MUMEI》

帰ろ思てたんやけど名残惜しい気ぃして‥‥

暫く新木と海を見つめとった。

空の色を映して碧く澄んだ水が──

陽の光に反射してキラキラしとる。

「なぁ‥」

「───────」

「綺麗やね──」

「──そう‥だね」

「‥どないしたん‥?」

「‥‥‥‥‥‥‥」

「新木‥?」

声をかけたんやけど──

新木は何も答えんかった。

何か悩んどるんやろか。

「なぁ‥何かあったん‥?」

「──ないよ、何も」

囁くみたいに小さな声で言うた新木は‥

何か影があるみたいに見えた。

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