《MUMEI》
再降臨
「…斎藤アラタです。」

幻を見ているのだろうか?今、目の前にいるのは、昨日屋上で触れた肩の持ち主だ。

斎藤アラタ……
滝田ではないのか………

親の都合で6月という微妙な時期に転校、ありふれた転校生のパターンだ。

やはり、包帯を顔に巻いていた(左目だけであったが)。皮膚と同化しているかのように、白い。
屋上の姿は網膜に刻まれた衝撃だったが、
今も充分神々しい。

顔はほぼ瞬きもせず無駄無く活動していて虚ろな瞳も相変わらずだった。

あの首筋はシャツで覆われ、大きめのベージュのセーターが手を隠している。

最後尾の窓際に机を設置していた。教科書は前の席(欠席)から借りている。

俺は密かに斎藤アラタとただ一人、横平行の席ということで歓喜した。

机の横から盗み見た。
…恐らく全員が。

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