《MUMEI》

「行ってきます」と一人、誰も居ない家に一言行ってコンビニへ出掛けた。

コンビニは家から400m程しかない。歩いてもすぐだ。しかしコンビニの手前で春の足は止まった。
かつてのクラスメートの姿があったからだ。

心臓の鼓動がドクンドクンと辺りに聞こえるかと思うほど大きくなる。呼吸も次第に荒くなっていく。
タッ。春はコンビニとは反対の方向に走り出した。

「はぁぁっ…」春は気がつくと細い路地裏に立っていた。
「……違うコンビニに行こ」と春はきたみちを引き返そうとした。その時、

『…ル……ッチ、………の方……よ…』

「えっ?」春は振り返った。

『ハ…ルコッチだよ、…ッチに来…て』
暖かみのあるそして優しい声が頭に響くように聞こえ来た。
春は心を捕らわれたかのようにゆっくりと路地裏の奥へと歩き出した。
路地裏はおくへ行くにしたがって狭まっていた。高い建物に太陽の光はとどかないはずなのに何故か明るくゴミも落ちてなくキレイだった。暫くすると何かが見えてきた
「キレイ…」

一番奥は行き止まりだった。しかしそこは少し広くなっていて鏡が置かれていた。大きさは二人は完全に写せるほど大きく、回りにはこれでもかというほど装飾が、施されていた。
もっと近くで見たいと思い春は鏡に手を伸ばした。
「声がする。私をよんでるの?」
春が鏡に触れた瞬間鏡の表面が触れた所を中心に波紋の様に広がりだした。しかし不思議と嫌な気分はしない。春は、もっと触れてみたいとさらに近づいた。
波紋はさらに大きくなっていく。そして、

「きゃあっ!!」

春は、次の瞬間鏡に吸い込まれるように入っていった。

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